はじめに
「ちょっとしたことが、なぜかすごくつらく感じる」
そんな経験はありませんか?
それは、あなたの感受性が高すぎるからではありません。
出来事そのものではなく、“そこにどんな意味や価値を乗せているか”によって、私たちの悩みの重さは大きく変わります。
この記事では、日常に潜む「自分フィルター」の働きと、事実・意味・価値の違いに注目して、悩みに巻き込まれすぎない思考習慣を紹介します。
悩みの多くは「意味づけ」から生まれている
たとえばこんな場面──
- 上司に軽く注意された
- 友人からの返信が遅れた
- SNSで他人が楽しそうにしていた
このような出来事自体は、ただの「事実」です。
けれど私たちはそこに、
- 「嫌われたかもしれない」
- 「自分だけうまくいっていない」
- 「また失敗した」
といった意味や価値を、無意識に付け加えてしまいます。
そしてその意味づけによって、感情が揺さぶられ、悩みが深まっていくのです。
「自分フィルター」が意味と価値を盛りすぎる
この意味づけを生み出しているのが、いわゆる「自分フィルター」です。
これは、過去の経験・性格・思い込みなどによって形作られた、自分だけの解釈レンズです。
フィルターを通すことで、私たちは出来事に必要以上の「意味」や「価値」を乗せてしまいます。
たとえば──
- 些細なミス → 「自分には価値がない」
- 会話のすれ違い → 「もう嫌われた」
- 周囲の楽しそうな様子 → 「自分は孤立している」
このように、事実を見ずに、意味と価値のほうばかりを見てしまう。
その結果、実際の出来事よりも心のダメージが大きくなってしまうのです。
意味や価値に飲み込まれると、事実が見えなくなる
本来、出来事には“ただ起きただけ”の側面があります。
しかし、自分フィルターが働くと、
- 意味を過剰に解釈し
- 価値を一方的に評価し
- 結果として「つらい」と感じる
というパターンが生まれます。
つまり、意味や価値を自分で盛りすぎることで、事実が見えなくなっているのです。
「相手はただ忙しかっただけかもしれない」
「ミスは誰でもするものだったかもしれない」
──そんな可能性を見逃してしまうのです。
自動思考がフィルターを強化する
さらにやっかいなのは、こうした解釈が「自動的に」行われるという点です。
- 「また怒られるかもしれない」
- 「自分には無理に決まってる」
- 「誰も自分をわかってくれない」
こうした自動思考が繰り返されることで、自分フィルターは強化されていきます。
そして、事実よりも「思い込み」が優先される状態が当たり前になってしまうのです。
だからこそ、「気づくこと」が第一歩
ではどうすれば、この悪循環から抜け出せるのでしょうか?
大切なのは、まず「自分が今見ているのは“事実”か? それとも“意味づけ”か?」と気づくことです。
- 「これは本当に相手の問題なのか?」
- 「自分の過去の経験がそう見せているだけでは?」
そう問いかけるだけでも、感情の波は少しずつおさまっていきます。
マインドフルネスで「意味づけのクセ」に気づく
こうした気づきを助けてくれるのが、マインドフルネスという習慣です。
- 呼吸に意識を戻す
- 思考にラベルをつける(「これは不安」「また過去の記憶だ」など)
- 今この瞬間に意識を戻す
この練習を続けることで、「あ、今また意味を盛りすぎたな」とフィルターに気づける自分が育っていきます。
フィルターは外せなくても、見抜くことはできる
「自分フィルター」は誰にでもありますし、完全には外せません。
でも、気づいて見抜けるようになるだけで、感情に流される時間は確実に短くなります。
- 今の気分は事実に合っているか?
- ほかの人ならどう受け取るか?
- 意味と価値を乗せすぎていないか?
この問いかけを習慣にすることで、現実の見え方が少しずつ変わっていきます。
おわりに:「意味を探す」のをやめてみる
悩みの原因は、出来事そのものよりも、そこに自分が与えた“意味”や“価値”かもしれません。
だからこそ、すべての出来事に意味を探すのを、少しだけやめてみる。
そのかわりに、「事実」だけを淡々と見つめる時間を増やしてみる。
それだけで、心の中の重さはずいぶん軽くなるはずです。
まとめ
- 悩みの多くは「意味づけ」と「価値の盛りすぎ」から生まれている
- 出来事そのもの=事実、そこに意味や価値を乗せているのは自分自身
- フィルターが強くなると、事実が見えなくなる
- 「これは事実か? 意味づけか?」と問い直す習慣が効果的
- マインドフルネスは、気づきと調整のトレーニングになる
「出来事」は、ただ起きただけ。
それにどんな意味を与えるかは、自分で選べます。
まずは、その“意味づけのクセ”に気づくことから始めましょう。
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